RL78/G13 Stickでリアルタイムクロックを使ってLチカ

最近、RL78/G13 Stick評価ボード(*)を購入した手始めに、定番のLチカを行ったので手順をメモ。

環境構築

ソフトウェアの方は、ルネサスのサイトからCS+ for CA,CXをダウンロード・インストール。また評価ボードのマニュアルに従って、評価ボードのデバイスドライバをインストール。
ハードウェアの方は、マニュアルに従ってデバッグツールが動作するようにジャンパ設定を行う。

プロジェクトの作成

R5F100LE(64KB)でプロジェクト作成。
次にツールプラグインの管理で、「コード生成プラグイン」を有効化する。
またデバッガはRL78 EZ Emulatorを選択。

コーディング

今回はリアルタイムクロックで2秒周期でLEDを点滅させるプログラムを書く。
レジスタ設定が煩雑なので、今回はCS+のコード生成プラグイン任せでレジスタ設定のコードを生成する。

コード生成プラグインでの生成

コード生成のメニューから、以下を設定する。

  • 端子割り当て設定はデフォルトで確定する。
  • 以下リアルタイムクロック設定
    • クロック設定で、動作モード設定とEVDD設定を「高速メインモード2.7~5.5(V)」、サブシステム・クロック設定を「動作」「XT1発振」にする。
    • リアルタイムクロック動作設定で、動作設定を「使用する」、リアルタイムクロック初期値設定をチェックして任意の日時を指定、アラーム検出機能をチェック、定周期割り込み機能をチェックして「1秒に1度」を選択
  • LED出力設定として、ポート設定で、ポート7のP77を出力に設定する。

設定が終わったら、「コード生成」でコードを生成する。

実装

煩雑なレジスタ設定や割り込み設定は自動生成されているので、あとはリアルタイムクロックの開始処理と、割り込み処理を記述する。
r_main.cのmain関数を以下のように記述

void main(void)
{
    R_MAIN_UserInit();
    /* Start user code. Do not edit comment generated here */
    R_RTC_Start();

    while (1U)
    {
        ;
    }
    /* End user code. Do not edit comment generated here */
}

次にr_cg_rtc_user.cの割り込み関数r_rtc_callback_constperiod()を以下のように記述。

static void r_rtc_callback_constperiod(void)
{
    /* Start user code. Do not edit comment generated here */
    static int flg = 0;
    
    if (flg) {
	    P7 = P7 & 0x7f;
	    flg = 0;
    } else {
	    P7 = P7 | 0x80;
	    flg = 1;
    }
    /* End user code. Do not edit comment generated here */
}

あとはこれをビルドし基板にダウンロード・実行すると、基板上のLEDが2秒周期で点滅するようになる。

TOPPERS/ASP3をシミュレータで動かす & タスクを実装する

最近公開されたTOPPERS/ASP3については、Mac OS Xでのシミュレーション環境がいち早く公開されている。今回はそのビルド・実行方法と、簡易的なタスクの実装方法についてまとめる。

シミュレータの実行

ダウンロード

以下から「Mac OS Xシミュレーション環境簡易パッケージ」をダウンロード、解凍
TOPPERSプロジェクト/ASP3カーネル

環境構築

ダウンロードフォルダ中の「doc/user.txt」に必要な環境が記述されている。
基本的に以前のTOPPERS/ASPと同じ環境を使う。これについては公式・非公式ともにわかりやすい解説が複数あるので、今回は割愛する。
ただ一点だけ、TOPPERS/ASPからの変更点として、コンフィギュレータがrubyスクリプトになっているので、rubyの実行環境が必要になる。

ビルド、実行

ダウンロードフォルダで以下を実行する。

mkdir OBJ
cd OBJ
ruby ../configure.rb -T macosx_xcode
make

するとOBJフォルダ内に「asp」という実行ファイルが生成される。これを実行するとサンプル・アプリケーションを実行するシミュレーション環境が動く。

タスクの実装

今回はデフォルトの環境に簡単なタスクを追加する。
具体的には「task_hoge」「task_highlevel_hoge」という2つのタスクを用意。task_hogeからより優先度の高いtask_highlevel_hogeをウェイクアップする処理を追加する。

タスク本体の実装

まずタスクの実装を用意。sampleフォルダのsample1.cに以下を記述

void task_hoge(intptr_t exinf)
{
    while (true) {
        slp_tsk();
        syslog(LOG_INFO, "hoge");
        wup_tsk(TASK_HIGH_HOGE);
        syslog(LOG_INFO, "hoge end");
    }
}

void task_highlevel_hoge(intptr_t exinf)
{
    while (true) {
        slp_tsk();
        syslog(LOG_INFO, "high hoge");
        syslog(LOG_INFO, "high hoge end");
    }
}

sample1.hに以下のプロトタイプ宣言を追加。

extern void task_hoge(intptr_t exinf);
extern void task_highlevel_hoge(intptr_t exinf);

コンフィギュレータによるタスク設定コード生成

sampleフォルダのsample1.cfgに以下の記述を追加

CRE_TSK(TASK_HOGE, { TA_NULL, 10, task_hoge, HIGH_PRIORITY, STACK_SIZE, NULL });
CRE_TSK(TASK_HIGH_HOGE, { TA_NULL, 11, task_highlevel_hoge, HIGH_PRIORITY - 1, STACK_SIZE, NULL });

冒頭で作成したOBJフォルダにて、ターミナルで以下を実行してタスク設定コードを更新する。

ruby ../configure.rb -T macosx_xcode

タスク呼び出し部分の実装

sample1.cのmain_task関数内のタスク起動部の記述に、以下のタスクを起動する記述を追加。

act_tsk(TASK_HOGE);
act_tsk(TASK_HIGH_HOGE);
wup_tsk(TASK_HOGE);

なお既存コードに今回の追加を行うとtask関数内で不正なメモリアクセスが発生するけれど、追加部分の実行に支障はないのでそのままとする(graph配列への参照部分にガード条件を追加すれば抑止できる)。

ビルド、実行

ターミナルで以下を実行。

make
./asp

するとアプリケーション起動時に以下のログ出力が追加で表示されるようになる。実装通り、「task_hogeが、より優先度の高いtask_highlevel_hogeを呼び出す→task_hogeに復帰する」という動作が行われていることがわかる。

(略)
System logging task is started.
Sample program starts (exinf = 0).
hoge
high hoge
high hoge end
hoge end
(略)

MacやLinuxでPICTを使う

組合せテストツールのPICTの解説で、表題についてよく聞かれるのでメモ。

PICTについては、専用のバイナリファイルで配布されていたこともあり、今までWindowsで使用されてきた。
ただ去年からGithubオープンソース化され、gccやclangで自由にビルドできるようになった。それに伴い、MacLinuxでもWindowsと同じぐらい手軽に利用できるようになっている。

あえて言うまでもないかもしれないが、導入方法は以下の通り。最近のgccやclangが使え、makeできる環境であれば、OSは問わない。

  1. https://github.com/Microsoft/pict」にて、Download ZIPからファイルダウンロード、解凍
  2. 解答したディレクトリで「make」実行。同ディレクトリにバイナリpictができる。

使用例

このディレクトリに、例えば以下のようなファイルsample.txtを作成する

OS:Win, Mac, Ubuntu
Compiler:GCC, clang
Lang:c, c++, asm

そこで以下のコマンドを実行する。

./pict sample.txt

すると以下のように2ワイズカバレッジ100%の組合せ一覧が出力される。

OS	Compiler	Lang
Win	GCC	asm
Ubuntu	clang	asm
Mac	GCC	c
Mac	clang	c++
Win	clang	c
Ubuntu	GCC	c++
Win	clang	c++
Ubuntu	clang	c
Mac	GCC	asm

clang/gccに組み込まれたAddressSanitizer/LeakSanitizerでメモリエラーを捕捉する

C/C++でのユニットテストによるメモリリーク検出 - 千里霧中の補足。

メモリエラーの検出方法についてだけれど、最近のclangやgccだと、AddressSanitizerという動的解析ツールが組み込まれており、それを活用できる。

使用する場合はコンパイラオプション「-fsanitize=address」「-fsanitize=leak」等を指定する。

題材

例えば以下のコードを対象にする。

//main.c
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>

void hoge(void)
{
        int *a_buff = (int *)malloc(5 * sizeof(int));
        a_buff[10] = 8;
}

int main(void)
{
        printf("test\n");
        hoge();
        return 0;
}


これを普通にコンパイルして実行すると「test」が表示されるだけで、特にエラーなどは検出されない。

AddressSanitizerでの不正なメモリアクセスの検出

一方で、以下のオプションでコンパイルして、AddressSanitizerを有効化する。

gcc -g -fsanitize=address main.c

これで実行すると、「a_buff[10] = 8」の実行タイミングで以下のエラーメッセージが出力されるようになる。

==23801==ERROR: AddressSanitizer: heap-buffer-overflow on address 
略
==23801==atos returned: An admin user name and password is required to enter Developer Mode.
    #0 0x113d63d4d in hoge (*****/./a.out+0x110000d4d)
    #1 0x113d63e04 in main (*****/./a.out+0x110000e04)
    #2 0x1ff199451ac in start (/usr/lib/system/libdyld.dylib+0x35a0)
    #3 0x0  (<unknown module>)
略
SUMMARY: AddressSanitizer: heap-buffer-overflow ??:0 hoge
Shadow bytes around the buggy address:
以下略

LeakSanitizerでのメモリリークの検出

次に以下のオプションでコンパイルして、LeakSanitizerを有効化する。

gcc -g -fsanitize=leak main.c

これを実行すると、アプリケーション終了時点で以下のエラーメッセージが出力されるようになる。

==6316==ERROR: LeakSanitizer: detected memory leaks

Direct leak of 20 byte(s) in 1 object(s) allocated from:
略

TPI NEXTファンデーション試験を受けた

TPI NEXTについて、日本語化を期に実践し始めているのと、現在TPI NEXT入門ワークショップを作っている背景から、最近、知識確認としてその資格試験であるファンデーション試験を受験した。
この試験、日本語で情報がほとんどなかったので今回参考までにまとめたい。

難易度

問題は以下で公開されているシラバスとサンプルに沿った内容だった。
EXIN - Your ICT Competence Partner - 資格プログラム

試験の内容は選択式の知識確認問題で、かなり易しいと感じた。指標としては例えばJSTQBのFLよりも更に易しいと思う。今回、日々の実践や講演資料作りでTPI NEXT本を読んでいた以外に、特に対策せず受験したが、解けない問題はなかった。前述のシラバス通りに対応すれば合格できると思う。

注意点

ただ注意点として、日本語表現にかなり問題があった。

問題の文章は、英語を直訳してそのまま載せたレベルで、「てにをは」のような日本語文法が破綻したものが複数あったと思う。元の英文を想像しないと理解が難しい問題があった。

またTPI Nextの日本語書籍と翻訳が統一されていない。用語の不統一で気になったもののうち、覚えているものを幾つかピックアップする。

  • 「キーエリア達成のコツ」は試験問題では「イネーブラ」と記述
  • 「目指すべき状況」は試験問題では「対象の状態」と記述
  • 「テスト業務の専門性」は試験問題では「テストの専門職」と記述
  • 「メトリクス」は試験問題では「測定基準」と記述

用語も、基本的に直訳調だった。元の英語の単語をイメージしないと混乱しがちだと感じるものがあった。

あと、書籍の記述の暗記を要求する、丸暗記系の問題が少しあったのもの気になった。問題の公開はできないようなので内容を簡略化して書くが、例えば「『対象の状態をマトリクスで表現する方法はどれか?』『選択肢:セルの背景色を変える、識別用の文字を書く、・・・』」といった問題があった(個人的に表現方法は何でも良いと思っているし、TPI NEXTでも強制は行っていないように見える。書籍でもフォントの色で区別しているものがある。そのため本質的にはどれでも良いような気がする。ただ原著では背景色で区別した図を載せているので、「背景色を変える」を正解としているのだと思う)。

さいごに

この資格は、TPI NEXTの基礎知識のチェックとしては有望かもしれない。
しかし日本語表現に問題が多い印象を持った。日本語書籍の方は、技術的なニュアンスも含めてかなり洗練された翻訳を行っているので、そのうち書籍から本試験に翻訳是正のフィードバックがかかりそうな気がする。そのため受験は様子を見て行ったほうがよいかもしれない。

「開発スピードと品質の両立実践法」登壇

先日、アイティメディア主催の「開発スピードと品質の両立実践法」というイベントにて、インタビュー形式の基調講演と、パネルディスカッションに登壇させていただきました。
https://itmedia.smartseminar.jp/public/seminar/view/723

イベントのテーマは「品質とスピードを両立するためには」「リリースでトラブルを起こさないためには」といった普遍的なもので、フロントローディングの話、反復開発での計画作りとベロシティ最適化の話、エンジニア個々人が地力を高めていきましょうといった話をさせていただきました。
(企業セミナーではツール、プロセス、具体的なプラクティスと、属人性の少ない手法や技術が多い印象ですので、他の登壇者との差別化として、あえて当たり前というか、忘れてはならない現場の基礎的な話にフォーカスさせていただきました)

なお今回はディスカッションなどでツールベンダやツール導入コンサルのお話も直接聞け、大変有意義な機会となりました。
声をかけていただいたアイティメディア様、またその他開催関係者や参加者の方々に深くお礼申し上げます。

VimでVerilogのコーディング環境を確保

VimにおけるVerilog開発環境については、ここ数年で色々なプラグインが標準サポートしてきた。
整理のために、今回はVerilog関連のプラグインの設定を少しまとめたいと思う。

スニペット

今年になって、neosnippetsがVerilogを標準サポートしている。
neosnippet-snippets/verilog.snip at master · Shougo/neosnippet-snippets · GitHub
そのためNeoBundle等でneosnippetsを入れると、そのままVerilog用のスニペットを利用できるようになる。

構文チェック

Verilogの構文チェックについては、syntasticが少し前から標準サポートしている。
NeoBundleでsyntasticを入れる場合は以下を.vimrcへ。

NeoBundle 'scrooloose/syntastic'

またこのVerilogの構文チェックを有効化するにはVerilatorのインストールが必要になる。
homebrew経由だと以下でインストール。

brew install verilator

なおこのsyntastic & verilatorのサポートは結構強力で、入れた時は最強のVerilogエディター誕生みたいな気分になれる。
以下はファイル保存時に表示される構文チェックの結果例。異常な構文の箇所に「>>」赤文字が、最下部に何が異常かの警告が出る。

f:id:goyoki:20150625220954p:plain

f:id:goyoki:20150625221012p:plain

ブロック間のジャンプ

matchit.vimを有効にすると、そのままbegin〜end、module〜endmoduleなどVerilogのブロック間を%でジャンプできるようになる。またhl_matchit.vimなども普通に動く。
matchit.vimはデフォルトで格納されているので、有効化は.vimrcに以下を挿入すればできる。

:source $VIMRUNTIME/macros/matchit.vim

入力補完

verilog.dict vimrc」などでウェブ検索すると、Verilog固有の辞書ファイルが見つかる。参考にして自作したり、ライセンスの範囲内で流用したりして、neocomplcache・neocompleteなどに登録すれば、Verilogの入力補完ができるようになる。