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これから製造業はどうなるのか

 最近興味深いエントリ(業界別の”壊滅度”リスト - Chikirinの日記)を見つけたが、自分としても、そこで書かれていることと実際に眼にするものに大きな差異は感じない。私は製造業にいるのだけれど、この業界も、来年度初めあたりから大きく変化することになると思う。

 良い機会なので、今回は製造業に限定して、構造の変化という観点でこれからどういう風に変化していくか予想してみたいと思う。以下トピックごとにまとめたい。

下請子会社の拡大

 今後はまず子会社を増やし、本社側の業務や機能を分散させる動きが出てくると思う。目的は今後悪化するであろう、人材流動性の低下に伴うリスクの軽減のため。具体的には以下がある。

労働集約的な業務を本社から分離する

 ソフトウェア開発など、労働集約的な業務は常に人を抱えすぎるリスクを持っている。そうしたリスクは、現状の景気悪化の下では、固定費が変わらないまま売上が減るといった形で、利益率へ悪影響を及ぼしてくる。
 そこでその対応策として、労働集約的な業務を担当する子会社を設置し、出向や下請けの形で本社から業務を分離させる。これにより、固定費で投資や経営の足を引っ張られるような状態を回避する。この例としては、ソフトウェア技術者を丸ごと子会社に分離させた例()などが挙げられると思う。

本社の人材の待遇を維持する

 今後は収益悪化に伴い、社員の待遇の維持が困難になる可能性がある。一方で、労働集約的な業務や製造関連の業務に関しては、相対的に付加価値が低いものがあり、低待遇でも人材市場でやっていける分野がある()。
 そこで社員の待遇維持の対策として、低待遇でも成立できる業務を子会社や関連会社に移管させる。これにより、不況でも本社側の給与や福利厚生などを維持し、人材確保に支障を生じさせないようにする。なおこれは既に一般的な傾向(工場を子会社に運営させる体制は、大手メーカーではありふれたもの)だが、コールスタッフやライン工といった業務の多くを担当している契約社員や派遣社員が規制されるのが濃厚な点で、今後さらに加速すると感じる。

関連会社間で人材の流動性を確保する

 人材の流動性に関連する問題として、今後行われるだろう人材派遣の規制の他に、収益悪化に伴って過剰雇用の問題が顕在化してくる可能性がある。
 そこでその対策として、親会社・子会社での社員のやり取りを活発化させる。例えば安定的でない業務は子会社の下請け社員に任せたり、本社の過剰社員を子会社に出向・転属させたりすることで、しかるべきところで過剰な固定費を発生させないようにする。

カンパニー制の普及

 カンパニー制()は事業部ごとに人事や給与体系を分離させる経営体制。目的は命綱のコア事業への悪影響を軽減するため。具体的に以下がある。

コア事業での対具に悪影響を与えないようにする。

 今後は景気悪化に伴い、不採算化する事業が増加する可能性が高い。そこで対策として、人事や収支を事業部ごとに分離させることで、不採算事業があってもボーナスカットなどの待遇悪化をその事業内で完結させる。結果、他の事業の待遇(=人材確保力)に影響を与えないようにする。

事業のM&Aや切り売りを容易にする。

 現在は景気悪化に伴って不採算事業が発生する可能性があるが、一方で資源や医療など重要度が高まっている分野で市場が拡大しつつある。そうした変化に柔軟に対応するため、カンパニー制で事業の管理を簡便化する。具体的には、経営体制を分けることで買収企業を事業部として組み込みやすくしたり、不採算部門の売却を容易にしたりする。
 これによりコア事業の足を引っ張る事業の清算や、有望な事業の取り込みを機動的にでき、人材流動性の硬直や特定事業の収益悪化といったリスクを軽減できる。

海外事業の運営を容易にする。

 現在は円高が進んでいる背景から、海外企業の買収や運営が容易になっている()。
 そこでカンパニー制の導入により、海外で事業の経営を完結できるような構造を実現する。それにより国外の事業の管理を簡便化するほか、日本メーカーが弱いとされる新興国でのローカライズ対策やマーケティングの改善を図る。

専業化

 特定の技術や製品に特化した経営を志向する。目的は事業を支える既得権益の確保、具体的にはクリティカルな技術に対する投資力の強化である。


 具体的には、まず今後は需要の低下でレッドオーシャン()では過当競争が発生し、収益を得られなくなる可能性が高いという予測がある。また、ここ数年は、ファブレスや部品・機能のモジュール化、特許やIP等の商品化が普及している背景から、家電といったまとまった機能を持つ製品はよりコモディティ化しやすくなっているという世情がある。

 そこで製品開発では、大手家電がとってきた総花的なアプローチは避け、クリティカルな技術やモジュールの開発に力を入れる。
 具体的にはクリティカルな技術やモジュールを先行して特許で囲い込み、部品・モジュールのBtoBや特許のロイヤリティ料でも収益を稼ぐ構造を取ることで、自社製品のシェア以外の権益を確保する。なおこれも既に現れている傾向で、例えば数年前から海外企業が多く参入してきたテレビなどで、そうしたアプローチが見られる。

 ここではまた、クリティカルでない部分は外注やコストを抑えた(待遇を抑えた)子会社で済ませ、本社の開発リソースはクリティカルな技術に集中させるようなアプローチが取られるとも予想される。
 最近の例としては、三洋のエネルギーへの特化()がそうだろう。


 まとめると、以下のような流れになると感じる。

  • 雇用を横方向(カンパニー制)と縦方向(子会社)に分ける
  • コア事業の高待遇・投資力を重視し、リスクのある事業は柔軟に売買する

 では個人レベルでどうすればいいかという点については、機会があれば別のエントリとしてまとめようと思う。