問題形成チャートについて

 少し前に佐藤允一さんの問題構造の書籍を読んでいたが、そこで説明される問題形成チャートが書籍で解説される問題構造をうまくまとめていて良かったので、今回紹介したい。なおこのチャートは結構昔に提唱されたものだけれど、REBOKに似た図が使われている等、今でもある程度普及しているようだ。

問題形成チャート

 問題形成チャートは以下のような形を取る。主に問題の構造を明示化するのに使われる。

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 なお注意として、これは問題の因果関係を図化するのではなく、問題を産んだ一連の活動を図化する。例えば「テスト漏れによるバグ流出」という問題について図を描くならば、Whyツリーのようなバグ流出の要因の連なりを描くわけではない。その時のテストのやり方を図に展開して、結果として目標と現状の間にバグ流出という問題が発生している、という図を記述する。

 各部の説明だけれど、この図の定義においては、問題は「目標と現状のギャップ」と定義される。
 「目標」についてだけれど、まずチャートでは目標を生む外部要因として、顧客や社会の変化・条件を「環境変化」として定義している。そして「環境変化」に対して組織としてどのような「目標」に向かうべきか目標水準を具体的なレベルで定義する。次に目標の実現手段として「方針」を明確化する。
 次に「現状」について。こちらは方針や目標に対して、「入力」「制約条件」をインプットに、「外乱」受けながらプロセスを動かした結果、生まれるのが「現状」と構造化している。


 なおこのチャートのメリットだけれど、当然チャートを書くことだけが問題解決策になるわけじゃない。ただ構造化することで問題が理解しやすくなるし、問題点や改善対象を切り分けて考えられるようになる。例えば構造化すれば「要素間のつながりに問題がある(目標に対して方針が適切ではない等)」とか「問題点が外乱とプロセス両方にある。自責のプロセスの方で何とかしていこう」といった思考が可能になる。
 あと佐藤允一さんの書籍では、「問題形成チャート」の名の通り、この図を使って問題形成を整理し、問題を改善をしていくアプローチが解説されている。

具体例

 具体例としては、簡易的なものだけど以下の様なものになる。

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その他の定義

 その他、今回の図で紹介していない定義として以下がある。こちらもこの定義を使用すれば問題が解決するという類のものではないけれど、問題についての会話や分析に有用だと感じる。

  • 問題の分類
    • 普通に維持すべき正常状態からの逸脱や、既存の目標に対する未達など、現状のあるべき水準と現状のギャップは「発生型問題」
    • 将来発生しそうな問題など、未来のあるべき水準と現状のギャップは「設定型問題」
    • 「発生型問題」「設定型問題」に分類されないけれど、現状をより良くするために設定する改善目標と現状のギャップは「探索型問題」
  • 問題の原因構造の定義
    • 「問題」を引き起こした原因のうち、対応可能なものは「問題点」と定義
  • 目標や方針の定義
    • 組織として果たそうとしている使命や社会的機能は「目的」
    • 目的の実現のために達成が必要な水準が「目標」。「目標」は達成度を客観的に評価される形で表現される。なお目標は「組織目標」「チーム目標」「個人目標」とブレークダウンの構造でしばしば階層化される
    • 目標の達成手段のアプローチや方向性が「方針」