レビューのレバレッジ性・ピンポイント性を確保する開発プロセス設計

 一定以上の規模のプロジェクトでは、開発プロセス設計において、テックリードなど有識者による横断的なテクニカルレビューをどうするかが課題になります。
 そこでは、次の課題への対応が求められます。

  • レビューのレバレッジ性の確保。少数のレビューアの影響力を全体に発揮させる。
  • レビューのピンポイント性の確保。多数の業務作業の中で、有識者の力が求められる作業に集中してレビューを設ける。

 このレビューのレバレッジ性・ピンポイント性の確保のためには、開発プロセス設計において、レビューのレバレッジポイント(少ないリソースで大きな影響を発揮できるポイント)を設け、そのレバレッジポイントにレビュー工程を確保するアプローチが有効になります。

レビューのレバレッジポイント

 レビューの代表的なレバレッジポイントに以下があります。有識者によるテクニカルレビューの力を引き出したい場合、これらに対しレビュー工程を設けるのが、有効な開発プロセス設計のアプローチとなります。

立脚点が妥当かレビューする

 ステークホルダの識別に漏れがないか、要求源の識別ができているか、スコープの理解が妥当か、特定のモデル(例えば品質特性)の観点で抜け誤りがないか、レビューします。
 そうした活動の立脚点に問題があると、以降の大きな成果物の誤りや欠落を誘発します。それを防げる点で、レビューのレバレッジ性を確保しやすいです。

方向づけが妥当かレビューする

 要求に対する対応の方向づけをレビューします。
 例えばセキュリティをしっかり確保するように一貫づけられている、特定の非機能性能を向上できるように各所に配慮がされている、保守性の確保が全体にわたって配慮されている、といったものを確認します。
 そうした方向づけをレビューで正しておけば、成果物全体の傾向に影響力を発揮できます。

難易度の高い課題対応が妥当かレビューする

 テックリードなど有識者でなければ対応が難しい課題対応を、ピンポイントでレビューします。例えば複雑なハードウェア制御のアルゴリズム設計といったものを確認します。
 これは、多数の業務作業の中で、テクニカルレビューで見るべきポイントに対するレビューのピンポイント制の確保につながります。

影響力の大きい判断が妥当かレビューする

 プロジェクト、チーム全体を横断するような、全体方針の判断をレビューします。例えばプロダクト全体の実装形式に影響するフレームワークの選定、開発プロセスのテーラリングといったものがそれに該当します。
 こうした全体に影響する判断のレビューは、レビューのレバレッジ確保につながります。

レバレッジポイントを確保するプロセスの動的なメカニズム

 レバレッジポイントの確保アプローチに、プロセスの動的なメカニズムが有効な場合があります。
 例えばその代表例にDRBFMがあります。
 DRBFMは、レビュー観点に故障モードを用います。この故障モードは、開発活動を通して蓄積・整理することで、レビューの適切性を高めていきます。
 そこでは、有識者はレビューを通してこの故障モードを作りこみチーム全体に展開することで、有識者がいないレビューでも、有識者の配慮・工夫を活用できるようにします。すなわちレビューのレバレッジ性の確保に故障モードを活用できます。