人材採用でのマスアプローチからターゲットアプローチへの転換

 優秀なQAエンジニアは、チームやプロジェクトに大きな影響力を与えることがあります。例えば、チームの品質保証能力をイネーブリングして、迅速で的確な品質保証を実現します。チームを顧客満足に向け方向づけして、チームの力をより効率的に顧客価値につながるようにします。また、シフトレフトを促進して、チームの品質保証のコストや迅速性を高めます。
 こうした大きな影響力から、優秀なQAエンジニアの採用はソフトウェア開発でしばしば重要な課題になります。

 ただQAエンジニアに限らず優秀なエンジニアは売り手市場であり、他社との激しい競争になります。
 そこではターゲットとなるエンジニアに、競合他社より自社が魅力的であることを訴求して応募してもらう必要があります。大企業などに多い、エンジニア層になるべく広く告知して広く働きかけるマスアプローチでは、そうしたターゲット向けの働きかけの余力がなくなってしまうこともありえます。
 すなわち、優秀なエンジニアの採用では、人材採用の基本方針をマスアプローチからターゲットアプローチに転換する必要があります。

マスアプローチからターゲットアプローチへの転換

 マスアプローチからターゲットアプローチへの転換では、求人活動の多くでアプローチが変わります。その変化を以下にまとめます。

人材要項の表現
  • マスアプローチ:多くの人材にリーチするため、一定の曖昧さや幅広さを確保する
  • ターゲットアプローチ:採用したい人材が、入社後どのような地位でどのような業務を担当するか具体的にイメージを持てる情報を提供する。ターゲットに合わせてカスタマイズする
求人の告知
  • マスアプローチ:人材紹介会社や求人サイト、求人広告を通じて広く求人を広める
  • ターゲットアプローチ:リファラル採用やダイレクトリクルーティングで、採用したい人材にダイレクトに求人を働きかける
待遇の提示
  • マスアプローチ:幅広い人材に対応するため、広い待遇レンジを提示する
  • ターゲットアプローチ:具体的な好待遇を提示する。変動幅がある場合は特に下限を高く提示する
リファラル採用のアプローチ
  • マスアプローチ:所属社員全体に知人の紹介を依頼する
  • ターゲットアプローチ:採用したい人材と関係を持つ者を特定してそれ経由で求人を働きかける。あるいは採用したい人材と関係づくりを行い、リファラル採用につなげる
採用活動のタイミング
  • マスアプローチ:求人したいタイミングに求人活動を行う
  • ターゲットアプローチ:採用したい人材が転職できるタイミングを読んで、事前に働きかける

ターゲットアプローチのための採用技術の蓄積

 またターゲットアプローチの実践で留意が必要なのが、高い採用技術が求められるという点です。優秀なエンジニアに魅力的な職場という印象を持ってもらうためには、以下の採用技術が求められます。

  • 「優秀なエンジニア」への深い理解。エンジニアに求められる高度な技術、経験、ソフトスキル、カルチャーフィットを解像度高く、理解・定義できなければならない
  • 優秀なエンジニアの要求への理解。例えば良い開発者体験や、魅力的な業務についての理解
  • 優秀な技術の評価能力。高度な技術について、適切に高低を評価できなければならない。

 こうした採用技術は、人事評価のみに特化した人事や、管理のみに特化したマネジメント層は保有していないことが多いです。技術、採用スキル両方について高い能力・経験を積んだ採用担当が求められます。これは一朝一夕に確保できるものではないため、日頃から採用技術を磨いて実現する必要があります。