SQuaRE、ISO/IEC 25010の製品品質モデルの改訂動向

SQuaRE、ISO/IEC 25010についてですが、標準規格の担当WGの方が、2022年の3月のタイミングで審議中の改訂情報に触れていました。

https://speakerdeck.com/washizaki/squareguan-lian-falsebiao-zhun-hua-falsequan-ti-dong-xiang-25010-25019gai-yao-ip-shan-jun-bo?slide=19

ISO/IEC 25010の製品品質モデルに限定して抜粋すると、主に以下のような改訂予定が説明されています。

  • 主特性にSafetyを新設。FailsafeやHazard warning、Safe integrationなどを副特性に配置
  • 移植性(Portability)をFlexibilityに変更。Scalabilityを副特性に追加
  • 使用性(Usability)をInteraction Capabilityに変更。Self-descriptivenessを副特性の追加
  • その他適宜の副特性の追加や名称変更を実施(Maturity→Faultlessnessの名称変更など)

このうち、移植性の改訂は、時代の変更に沿った良い改訂だと思います。

上記資料には10年スパンで改訂しているとありましたが、ここ10年で確実にソフトウェア開発を変えたのがインフラ関連の分野です。実行環境はAWSなど数が絞られたIaaSに構築することが当たり前になり、外部のSaaSをサービスの構成機能として活用することも普通になりました。Dockerやk8sといった仮想化技術が発達し、実行環境のコンテナ化も広く普及しています。例えば最近技術界隈で24時間以内にインフラ総取り換えをしてサービスを復旧させた事例が話題になっていましたが、これはインフラ分野が進化した現代ならではの出来事だと感じました。

振り返ると、現ISO/IEC 25010のインフラ関係の品質特性は、カスタマイズされた環境にカスタマイズしたプロダクトを設置する、旧来のスタイルに沿ったモデルになっていると感じます。仮想化で重視される冪等性や、IaaSやコンテナ・オーケストレーションで重要になるスケーラビリティといった、前述のインフラ環境の変遷を踏まえた品質観点では使いづらさがあります。上記で提示された改訂は、この使いずらさの是正に有効なものだと思います。
ただ、現在の実情を鑑みるとインフラ関連の改訂の程度がまだまだ甘い・不足しているようにも感じますので、この改訂ではさらに変更が大きくなる可能性もあると思います。

一方Safetyの追加は、日本人のWGらしいなあという印象です。存在意義は感じるものの、既存の信頼性と区別が曖昧な部分があり、それをどう整理してくるのかが気になりました。

10年スパンで改訂と資料中で説明されているため、改訂版は今年出てくるのではと思います。現場にとって使いやすいモデルになりそうなので、キャッチアップする価値があると感じます。